自家菜園の野菜や手作りパンチェッタがおいしいピッツェリア。
ドレッシングやパンチェッタも無添加で手作り。
国道17号線沿いにある「薪(まき)と石」はその名の通り薪を使った石窯で焼き上げるピザが食べられます。
この町の出身であるオーナーが18年前に開業して以来、地元の人やスキー客に大人気。
実はこの建物、もとは焼き肉屋さんと、棟続きでペンションがあったのですが、オーナー自らハンマーやチェーンソーを持って大胆に改築したもの。入口のドアをくぐるとすぐに店のシンボルの石窯が見えますが、この石窯も、ベルギーの古城のものだったというレンガをスタッフみんなで積み上げて作ったものだそう。オープン時には大工さんも一切頼まずに、内装もぜんぶ手作りで仕上げたのだとか。
そんな店内で食べられるのは、ピザ、パスタを中心にした気軽なイタリアン。
ピザのソースは手作りで、トッピングには自家菜園の野菜や、地元の名産であるまいたけなどを使ったものもあり、これが大人気。パスタやメインにも、地元産のもち豚や津南ポーク、美雪マスなど、できるだけ地元の素材を使っています。
特に自家菜園で作っている野菜は新鮮そのもの。オーナーやお母さんが作っている野菜は、有機肥料だけを使って広大な農地で育てているもので、朝や昼の仕込み前などに、オーナーやスタッフが畑でとってくるそう。作っている種類も多く、バジル、トマト、茄子、きゅうり、アスパラ、大葉、大根、葱、人参、トウモロコシ、じゃがいもなどなどが。夏はレタスなどの葉物以外はほぼ自家菜園の野菜でまかなえるのだそうです。
買わなくても美味しい物がたくさんあった魚沼
ピザ以外の人気のメニューとして多くの人が注文するのが「薪と石サラダ」。乗っている豆腐も店内で笹川流れのにがりをつかって寄せ豆腐にしているもの。材料になる豆乳は、新潟県内の越路町で栽培された「こしじむすめ」という大豆を、八海山の麓にある会社で、八海山の伏流水を使って「これでもかっていうくらい濃い豆乳」を作ってもらっているそう。自家菜園のバジリコを使ったマヨネーズが少しかかっていますが、さらに、フキノトウのドレッシングをかけて食べるというサラダです。
このドレッシングも、実は地元で穫れたフキノトウを、店の工房で加工して作っているもの。今回、同時に雪国A級グルメにも認定されました。こうした山菜は季節のメニューに使われることもあります。
「魚沼に帰ってきたら、買わなくても山に行けば食べられるものはいっぱいあるし、ましてやそれが美味しいんですから、使わない理由はないですよね」とオーナー。とはいえ山菜は、採ってくるのも下ごしらえも時間と手間がかかるもの。人件費を考えるとコンスタントに使うのは難しいものです。ご両親の作っている野菜も、「買ってくるよりもはるかに美味しかった」とはいえ、畑から収穫したり、泥だらけで多少の不揃いがある中で下ごしらえをしたりと手間はかかります。でもオーナーは「手間をかけるのが嫌だったらサービス業やらない方がいいじゃないですか」と笑い、自ら畑で収穫をするなど走り回っています。スタッフもそれを見て、手間がかかってもおいしい野菜を使うことに抵抗がなくなり、当たり前のように収穫や下ごしらえなどをするようになりました。
こうした地元の野菜や名産品、時には伝統野菜や山菜など、イタリアンとしては馴染みのなさそうな食材も、どんどんメニューに使われています。
「でも実は、イタリアンの修業をしたことはないんですよ」と笑うオーナー。もともと魚沼にいたころは和食の板前で、その後、東京でフレンチの店に入ってからはずっとフレンチ一本でやっていたのだそう。その中で、新潟の新井スキー場のオープンに際して、最初の事業としてイタリアンのレストランをオープンさせることになり、その責任者を任されたそう。
「それで、5日間だけ東京のタントタントというイタリアンの店に研修に入ったんです」
それまで、材料の分量や火加減など厳密に決められたレシピに基づいた料理であるフレンチの世界にいたオーナーは、自由に作れるイタリアンの世界に衝撃を受けたそうです。
「フレンチは和食や中華などと比べても特殊で、レシピを離れていい加減に作っちゃうとフレンチじゃなくなっちゃう。その点、イタリアンはほぼレシピがなくて、それが自分に合っていたんですね」
だから、スキー場の店をオープンさせた後、故郷に戻って独立しようとしたときには、「イタリアンでいこう」と決めていたそうです。
さらに、自宅でも無添加の料理で生活しているそうで、ピザのトマトソースやドレッシングも無添加。
また、店の自慢の素材として、自家製パンツェッタや美雪マスのスモークもあります。店の裏で、桜の葉をスモークして作ったもので、前菜やピザ、パスタなどに使われています。